交通事故によくある症状
顎関節症

むち打ちにより頚部を負傷した方で
意外と多いのが顎の痛みです。
筋肉や靭帯由来のもの、関節円板(クッション)の損傷、変形やリウマチなどにより、Ⅰ型~Ⅴ型に分類されています。
中でも最も多く見られるのがⅠ型やⅡ型です。
これらは咀嚼筋や顎を支える靭帯の症状を指すのですが(咬筋、内・外側翼突筋、側頭筋、外側靭帯)、実はこれらに加えて重要なのが、頭を支える胸鎖乳突筋や僧帽筋などの後頭部にある筋肉です。
これらは頚部や背部、胸部を緊張させてしまうため、側頭筋を緊張させて、その周囲の筋や靭帯にまで影響を及ぼしていると考えられます。
治療には第2頚椎や第7頚椎、鎖骨などの関節を神経学的、運動学的に治療する必要がありますが、当院ではそれにより多くの患者様が回復しています。
肩関節の痛み

腕が痛い・重い・痺れる・指が痺れる等は
前述した頚椎捻挫以外に肩関節捻挫を
患っていることが考えられます。
解剖学的肢位(かいぼうがくてきしい)とは腕を真っ直ぐに伸ばして手のひらを前方にした状態をいいますが、この時に痛みや痺れが前面にあるか後面にあるかで治療部位が判断されます。
治療するべき部位は、
前面は、『小胸筋』『胸鎖関節』『第1から第5胸肋関節』『肩鎖関節』
後面は、『肩甲挙筋』『菱形筋』『第1から第7肋椎関節』『第1から第7椎間関節』『僧帽筋』です。
これらに加えて『肩関節』『肘関節』『上撓尺関節』『手関節』『手根中手関節』なども理学的・運動学的に治療することが求められます。
腕や指の痺れは、単なる部分的なマッサージでは治癒することはまずありません。
関節可動域の制限や肩関節周囲の慢性的な痛みなどの後遺症が残ることが多く、専門的な治療が求められます。
腰の痛み

腰の痛みは
今や現代病といっても過言ではありません。
交通事故によるむち打ちや、日常生活におけるぎっくり腰、椎間板ヘルニアや脊柱間狭窄症、坐骨神経痛など、その原因・症状も様々です。
痺れや痛みは人それぞれですが、常に重い感じがする、動かすと痛い、寝ていても痛い、太ももが痛い・痺れる、おしりが痛い、骨盤が痛い、などを訴える方が多いようです。
腰といっても様々な部位から出来ていてそれが症状を複雑化しています。
通常、腰骨と言われているのは腰椎骨を指します。これは首や背中からの連続したもので、それらを含めると全部で24本、腰椎骨だけだと5本からなります。
これらは主に、いわゆる脊柱起立筋が支えています。これに加えて後縦靭帯や黄色靭帯などの数種類の靭帯が補助していますが、それ以外にも股関節からも大腰筋や腹筋群などにより腰部を構成し、その機能を支えています。
中でも脊柱起立筋は骨盤の上部や真ん中にある仙骨から伸びているため、骨盤の機能を失うと影響を受けやすく、腰椎を緊張させる事が痛みの原因となるようです。
このような理論から正確に解剖学的に治療することが求められるのですが、単にマッサージだけしてもなかなか完治に至らないで悩んでいる方も多いのはそのためです。
手の指の痛みや痺れ

むち打ちによる手や指の痛みや痺れは、
筋肉や血管、関節が複雑に絡んでいるので、それほど単純ではありません。
むち打ちによる手や指の痛みや痺れは、
神経が原因とされることが多いのですが、
それだけではなく、筋肉や血管、関節が複雑に絡んでいるので、それほど単純ではありません。
他の関節の症状もですが、指から遠く離れた部位(関連領域)が多く、この離れた部位から治療していきます。
特に指は手根部(手の平)にある関節はもちろん、胸部や背部の肋骨や鎖骨が原因となることが多く、また神経や血管の集中する首や肘も合わせて治療することで総合的に治療することができます。
どこからの治療を必要としているかは初めのストレステストから判断するため、豊富な知識と臨床経験が求められます。
首の痛み

寝違いや頚部の酷使などで
頚部痛を訴える患者さんは後を絶ちません。
またむち打ち症の多くが頚椎の捻挫を伴い、症状には痛みや痺れの他に、不眠や頭痛、不安感などの不定愁訴を訴えるのも頚椎捻挫から来るものです。
治療には第1頚椎から第7頚椎の各関節の機能を取り戻すように理学的・運動学的に治療することが求められます。
痺れや不眠症など不定愁訴が後遺症となることがありますので、治療には細心の注意が求められます。
肘(ひじ) 関節の痛み

むち打ちの際、肩の負傷時に
肘に痛みや痺れを訴える患者様は多いです。
肘(ひじ)関節周囲に痛みがある場合、内側にある痛みと外側にある痛みとでは、その治療部位は大きく違ってきます。
肘は上部にある上腕骨とその下にある撓骨(とうこつ)と尺骨(しゃくこつ)の三つの骨からできています。
上腕骨からは力こぶの上腕二頭筋や三頭筋が撓骨や尺骨に付いて、肘を曲げたり伸ばしたりします。
また、指を曲げたり伸ばしたりする筋肉も上腕骨の内側や外側からでています。前腕を捻る動作も円回内筋や回外筋などは上腕骨から出ています。
また、これら三本の骨がバラバラにならないように複数の靭帯で結んでいます(内側側副靭帯、外側側副靭帯、撓骨輪状靭帯)。
肘の痛みにはこれらの筋や靭帯が複雑に絡んで発生しています。
肘だけを治療してもなかなか治らないのはそのためです。
実は肘の治療には肩や胸部も外せません。
加えて複雑な肘の特殊な理学療法を行うことで、ようやく治ることになります。
また、むち打ちとは関係ありませんが学齢期前の幼児に見られる『肘内障』は撓骨輪状靭帯がめくれ上がったものです。整復治療はもちろんですが、再発しないように固定や指導することも大切です。
踵(かかと) の痛み

スポーツをする方や、立ち仕事をする方に
多く見られるのが踵(かかと)の痛みです。
実は踵の下方には脂肪から成るクッション材があり、衝撃を和らげる作用があります。
しかし、この踵の後部にはアキレス腱が付着する突起があり、この突起の下部が突き出た骨の棘(トゲ)が痛みの原因とされることが多いです。
また、踵自体に痛みを感じている方も多いのですが、踵にはそれ自体を動かすための筋肉がないため、その治療も痛み止やシップの処方や電気治療のみということがほとんどです。
しかし、踵にも関節や靭帯も存在しています。(距骨下関節、踵腓靭帯、距踵靭帯、足底靭帯など)
特に、踵を支える靭帯の治療を行うことが踵本来の動きを取り戻すことになり、痛みを取り除くことができます。
ただし、踵を動かすには特殊な方向があり、これを行うには正しい解剖学的知識が必要です。